ずっと君と・・・ 3

トンネルはいつものようにぽっかりと口を開け、ギイギイと風を鳴らし続けていた。
「ヤア、アナタハアノ時ノ神様デスネ。」
穴の前までやって来たハクにトンネルの守護をしているらしい人影が話しかけてきた。
「アナタミタイナ方ガ来ルナンテ驚キマシタヨ。ソレデ、今日ハ何ノゴ用デ?」
「トンネルを抜けさせてほしい。」
ハクの真剣な顔に戸惑ったのか、あるいはあまりにも無謀すぎる言動に
驚きを隠せなかったのか人影は慌てふためき始めた。
「ナ、何ヲ言ッテイルンデス?ココヲ抜ケラレルノハアチラノ世界カラ来タ者ダケダトイウノニ。」
「私は一刻も早く千尋という人間の少女に会いたいんだ。もう見守っているだけの存在なんて
耐えられない・・・。」
「シカシ、ソノ千尋トイウ子はアナタヲ忘レカケテイルラシイデハアリマセンカ。
失礼。ワタシハ人ノ心ガ読メルモノデ。」
「そう、千尋は私という存在を次第に忘れていっている。けれど私は忘れないでいてほしいんだ。
だから、たとえこの身を犠牲にしても会いに行くと心に決めた。もう後戻りしないつもりさ。」
マァ、ソウマデ言ワレタラ仕方ガアリマセンナ。デハ問イマショウ。
アナタガドレダケ千尋ヲ想ッテイルノカヲ。」
人影はまるで炎のように広がるとハクを取り囲み、圧力がこもった凄まじい熱風を巻き起こし始めた。
「サア、改メテ訊ネマショウ。アナタハ千尋ヲドレクライ大切ニ想ッテイマスカ?」
「私は昔から千尋を愛しく想っていた。私の中に落ちてきた時からずっと。」
「前置キハイイノデス!ワタシハアナタノ本音ガ知リタイダケ。」
凶暴化した人影の風が身体を切り裂いた。
「くっ。」
そうして何度も上手く言葉に綴れないまま、傷だらけになりながらも
ハクはやっとのことで本音を打ち明けた。
「私はこれから千尋と一緒に新しい道を歩んでいきたい。彼女が泣いた時にはその涙を拭って、
笑った時には声を合わせて大声で笑ってそんな平凡な人生を送っていきたいだけだ。」
それが本当の心情だと分かったのか、人影はハクを呪縛から解放した。
「アナタノオ気持チハヨク分カリマシタ。サア、コレデアナタハ自由ノ身デス。
トンネルヲクグルコトヲ許シマショウ。」
短い間だったが、世話になった。ありがとう。」